日々是雑感 2025年12月②

○2025.12.08月
■成瀬は都を駆け抜ける(2025=宮島未奈)新潮社 231頁
★来年には文庫が出るだろうから文庫を待とうかとも思ったがkindle無料公開分を読んだらすぐに読みたくなり、amazonは在庫切れだったので、散歩のついでにatreの有隣堂で。前作は半日で読んでしまったので今作は1日1〜2編ペースでじっくり味わうつもりだったが、結局途中から勢いがついて当日に読み切ってしまった。
★ここ15〜20年は本(新刊)はほぼネットで買っているが、前作は1作目を読んだら一刻も早く読みたくてネットの配達も待てずに午前中に蔦屋書店に行って買った。本でもマンガでもドラマでも映画でも「なんとなく続きが気になる」というのは最大の強み。
★明るい性格でお人好しでみんなのリーダーというキャラは履いて捨てるほど多くの作品に登場しているが成瀬のようなキャラは僕の記憶にはない。このキャラが大発明。
★全6編どれもじわっと染みるが特に5番目の「親愛なるあなたへ」に動かされた。偶然(失敗)と行動によって1日で人生が大きく拓いてゆく話。
★どんどん広がって最終的に日本人全員(或いは地球人全員!?)が成瀬と知り合いになる(天下を取る)という展開を予想していたが今作で一応シリーズ完結。できれば今後の成瀬の人生をずっと書き続けて欲しいが、よく考えたら、仮に毎年時代にリンクした新作を出されても、たぶん僕の人生の寿命が持たない。※AIモードによれば作者は「何年後かに、もしかしたら」と続編の可能性に言及
○2025.12.11木
■国宝(2025=李相日)175分
★宇多丸さんがネガティブに評価したポイント、5ヵ月前に映画館で1回だけ鑑賞・原作未読・鑑賞後に得た補足情報(ネット記事など)はごくわずかという僕は、言われてみればそうだったかもとは思うが、そもそも既にあまり覚えてなかった。
★原作未読・予備知識一切なしで1回だけ鑑賞して宇多丸さんが指摘された欠点にちゃんと気付ける人は相当な映画経験値を持っている人だけだろう。多くの観客にそれなりの鑑賞満足度を味あわせる為に、程々の脚本・演出にあえて抑えるという方法論を取っているという可能性もあるのではないだろうか?
★鑑賞直後の感想は「3時間くらいあるのにあまり長く感じなかった」「面白かったけどダイジェスト感があって物語的に強烈な深みはなかったような」「歌舞伎の舞台のシーンは綺麗で迫力があった(本当にあのふたりが演じていたのだろうか?)」「田中泯の存在感凄い」という程度。
★宇多丸さんの映画評で「それは違うだろう」と思った事は記憶する限りは一度もないので、「国宝」も原作を読んで何度か見返せば、今日指摘していた所も多分納得できると思うが、殆ど予備知識なしで映画館で観て3時間退屈せずに楽しめたというだけでも充分ではないかとも思う。STAR WARS EP8はSTAR WARS大好きな僕なのに映画館で観ている最中に退屈に感じた所や納得せきない展開がたくさんあったが、「国宝」はそういう所はなかった。どんどん話が進むので鑑賞中は考える時間がなかった。
★僕自身の映画に対する態度はエンタメとアートの間で子供の頃からずっと揺れている。すなわち、なんの予備知識もない中学生が人生で初めて映画館で観て「面白かった」と思える作品こそ傑作、映画的記憶その他の知識があればあるほど真髄が判る作品こそ傑作(なんの予備知識も映画的記憶もない中学生にはちんぷんかんぷん?)、そのどちらも正しいと思えて、その日の気分などでどちらにも揺れる。年齢を経るに従って後者の比重が増してはいるが、前者も捨てがたいという部分も確実にいまも残っている。
★歌舞伎に題材を取った映画は宇多丸さんも挙げていた「残菊物語」など戦前はたくさんあった気がするが、ここ80年では1本もぱっと浮かばない。いまU-NEXTで見る事ができる「残菊物語」はデジタル修正版だが映像も音声もいまいち。仮にもっとハイレベルにリストアして映画館で上映しても「国宝」ほどの観客は多分動員できない(モノクロという時点でproduction designの魅力が「国宝」に比べて大幅減)。
★僕のように歌舞伎鑑賞経験は生涯で1回だけという、殆ど歌舞伎に興味がない人間に、3時間もあるのに映画館に足を運ばせるだけの何かを「国宝」が持っていたのは事実は事実(僕の場合は単純に評判)。

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