クドカンの新ドラマ「不適切にもほどがある!」が始まった。1986年から2024年に阿部サダヲがタイムスリップする話。第1回を見てひっかかったポイントがいくつかあったので挙げておく。 ●ハイティーン・ブギ 娘と娘の友人、娘が憧れる先輩男子の髪型やファッションは82年頃の流行(歌詞が引用されていた近藤真彦「ハイティーン・ブギ」は82年6月発売)。86年に15歳前後の若者が数年前の流行や風俗を愛好していても問題はないが、素直にキリが良い84年に設定しても良かったのでは、と思ってしまう。86年に設定した意図は、第1回を見た限りでは、「B.T.T.F」に言及したかったから、くらいしか思いつかない(84年でも小泉今日子も尾美としのりも既にデビューしている)が、わざわざ中途半端な年代設定をしているからには、86年に何かの意味があり、彼らが86年に数年前の風俗を愛好している理由もあるのかもしれない。 ●運動会の我が子、肉眼で見てなかった……は10年先? 娘が10歳の時のビデオ(VHS)は86年に娘が15歳とすれば撮影時81年。81年は録画再生機がやっと安くなりはじめた頃(記憶では15万円以内)で、家庭用ビデオカメラ(小型の一体型カメラ)と言えるような商品はまだ発売前。内藤剛志が出演していたハンディカムのCMがバンバン流れて、子供の運動会をビデオ撮影するのが当たり前になったのは80年代後半以降だった筈。81年にビデオカメラで撮影、または8ミリフィルムカメラで撮影した素材をVHSにコンバートしていたとしたら相当なマニアだが、阿部サダヲのキャラは、酒とタバコと野球が好き、娘の貞操を過剰に心配、妻を亡くして出会いを求めている普通の昭和のオヤジで、86年には普及していたコンパクトなフィルムカメラを持ち歩いている描写もない。学校の同僚のマニアからカメラを借りた、死んだ妻は映像関係の仕事をしていた、など、81年頃に撮影したVHSがあっても不自然ではない理由はいくつも考えられるが、第1回を見た限りでは「ん?」となった。このVHSがタイムスリップに関わるキーアイテムである可能性はあるかもしれない。 ●過去に干渉? 2024年から1986年に来たと思われる吉田羊とその息子が、自分の意志で過去に来て、過去の人間に干渉しているのは、タイムスリップものの展開として相当に気になる部分。「B.T.T.F」のマーフィーには「未来に戻る」「自分が誕生しない未来を防ぐ」という行動原理があったが、今作の吉田羊とその息子には納得できる理屈はあるのだろうか。 ●38年後の俺? 2024年に来ている事を自覚している阿部サダヲが居酒屋で注文に四苦八苦という展開。別にそういう行動を取って悪くはないが、38年後の未来に来た事を自覚しているのなら、その時代の自分と娘がどうなっているか、まず最初に気にならないだろうか? 居酒屋に行かせるなら「いろいろ考えてテンパると酒を飲まずにはいられなくなる」というキャラ設定か何かが欲しかった。 ●地上波で裸? 2024年ならネットでいくらでも無修正動画を見られるのに、吉田羊の息子は「地上波で裸が見たい」と叫ぶ。これは第1回を見た限りでは全く判らない。アナログレコードで音楽を聴きたい的な懐古趣味だろうか。吉田羊の息子はスマホを持っていたかどうか思い出せない。 いろいろ気になる点はあるが、唐突なミュージカル展開には感心、1〜3月ドラマの中で一番この先の展開が気になるドラマではある。 (2024.01.30火)
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