日々是雑感 2025.09.28日

★【メモ】寛政12年=1800年 平成12年=2000年
■背中あわせのハートブレイク(1991=小林信彦)新潮文庫 411頁 ※1988新潮社
★「夢の砦」の暎子との最初のデートの会話(文庫版上巻P267〜)を連想させる主人公・隆とヒロイン・ケイとのやりとり(P252〜)。ケイは隆に対して「才能がある」「作家になったら?」と言うが、ここで隆が言うジョークは抜群に面白いとは思えない。「夢の砦」の暎子は仕事が欲しいので追従していると読むのが一番自然に思えたが、ミドルティーンのケイは何を考えてこのように発言したのだろう? ケイなりの愛情表現なのだろうか。
★マッカーサーが登場して朝鮮戦争に関するアメリカ側の経緯が描かれる終盤の唐突な展開、発売当時に読んだ時は特に気にならなかったが今回はどちらかというと夾雑に感じた。大人の視点もあった「ぼくたちの好きな戦争」の同じ手は全体小説に深みを与える効果があるが、この作品は最初から最後まで一貫して隆の視点の方が作品の主題である〈世間知らず(原題)〉のムードが強まった気がする。
★P282〜の隆と丘の会話。「きみに話ときたいことがある」「なんだい、改まって?」で怪文書事件に関する会話が続き、P287で「もう一つ、話がある」……「気分直しにきいてくれないか」「なんだよ、改まって」で別の話。高校生がこんなにまどろっこしい前置きをしてから話をするとは思えないので意図的に書いていると思うが、これはこの後まもなく病死する丘を印象付ける効果を狙っているのだろうか。

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